彼女は、急に訪ねてきた。
「ねぇ、ソーゴ。」
出会った頃の俺の年齢になった神楽は、少女を脱皮して女になっていた。
何が?
全てが。
顔つき、表情、仕草、そして、体つきまでも。
胸はふくよかに成長し、スタイルの良い体にはチャイナがよく似合っている。
「ソーゴ。」
少し淑やかになった口調。
女と言うものは凄く、変わる。
「何でィ。」
刻は真夜中。
彼女は突如として屯所を訪ねてきた。
「会いたくて、会いたくて、飛んで帰って来たヨ。」
「そりゃー光栄ですがねィ。」
2年振りの逢瀬ともなれば、嬉しさはひとしおだ。
けれど、時間が時間なだけに眠い。
「何だってこんな時間なんでィ。
昼に来るとかそーゆーことは出来ねェのかよ、アンタは。」
「地球に着いたのが今だったアル。
仕事が立て込んで……本当はもっと早く来たかったアルよ。」
「てゆーか、俺が女と寝てるとかってェのも考えなかったワケ?」
一瞬だけ、傷付いたような表情をした。
「もしかしてそうだったカ?
なら、あたしは帰るヨ。これから銀ちゃんのとこに報告しないと。」
俯いたまま立ち上がろうとする。
言葉の端々に[ソーゴが一番]という気持ちが見え隠れしているみたいだ。
何だってこんな時間なのか。
夜中で、危険を冒してまでも俺のところに来たかった理由。
「神楽。」
やっぱり、彼女の目には雫が。
「おかえり。」
「……そーごぉぉ…っ!!」
可愛いというより、美人になった顔に雫を這わせ、抱きついてきた。
……アンタ、此処どこか解ってんのかィ?
野郎の寝室だぜィ?寝てたから御誂え向きに布団まであるんだぜィ?
ついでに言うと、俺は健全な23の男だ。
細い肩に手を回せば、もう、とめられない。
「神楽……。」
「?」
久しぶりに触れる彼女の唇。
味わいつくすかのように、角度を変えて何度も。
「んっ……ふぁ……」
神楽の全身が酸素を求める。
座位の体勢から、覆いかぶさる形に。
「そー……ご……」
唇を少し貪っただけで潤む瞳、上気した肌。
何の穢れも知らなかった純真無垢のこの体に全てを刻み込んだ、俺。
薄暗い闇の中で、その様をじっと見下ろす。
理性が、飛ぶ。
ふ、と。
何かが切れたかのように、もう一度神楽に口付ける。
さっきよりも欲望を丸出しにした、キス。
「ふっ、んぅ……!」
キスをし続けたまま、手は服を脱がしにかかる。
首、鎖骨のボタンを外し、脇腹へと続くチャックを下ろす。
「…っぷはっ…!ヤメっ、そーご!」
「やめねェよ。」
「だって…ココ、屯所アルヨ?!」
「俺の部屋、だぜィ。」
「でも…!ひゃぅ!」
「可愛い声だけ、聞かせろィ。」
するりと、肩から絹の衣を下ろして白い肌を露出させる。
その柔肌に音を立てて口付ける。
可愛らしく震える躯、きつく閉じられた唇。
幾度も重ねて来たにも関わらず、相も変わらず恥らう様はまるで処女のよう。
「声、噛むなっての。」
あの頃とは違うほぼ成熟した胸を手で弄る。
俺の手の動きに合わせて形を変えるそれを良い様に玩び、官能を引き出す。
硬く主張し始める頂を含み、舌で転がせば、女の声が響く。
「っあ、ん…ふ……っ」
俺は、こいつのこの声を聞くのが好きだ。
乱れに乱れた姿を見るのも好きだ。
何だかんだ言って、こいつの全てが好きらしい。
「そー……ご……」
我慢が出来ない。
全てを脱がせ、白い肢体を月光の元に晒す。
自分が脱ぐのも程ほどに、抜き身の刀身を鞘に収めるが如く腰を進めた。
「っあ!あ、あ、そぅ…ッ、ヤッ、んんっ!」
肌のぶつかり合う乾いた音と、艶かしい嬌声、淫らな水音、荒い息。
扇情的なその存在全てに、何もかもを持っていかれそうになる。
「んあッ!んっ、やン、だ、も、あァんッ!」
シーツを掴んでいた手は俺の首に回され、普段の貌からは見られないような女の貌を見せる。
……背筋に電流が走った。
太股を両手で持ち、脚を広げ、もっともっと奥へと打ちつける。
「ヤッ!ダメ、そぅ……!んんっ!!」
「そ……な、締めるな…ッ」
「知らないッ、ん……あァ!イっちゃ…、だめェ…っ!」
「イっちまえィ……」
「あ、あ、そー……ごォ…っ!ああッ!!」
「くっ……」
どくり、と欲望の証を胎内に吐き出して、そのまま神楽を見下ろす。
荒い息と赤い顔、潤む瞳。
見てるだけで勃ちそうになる。
「そーご…」
「何でィ?」
「……会いたかったヨ…」
「………俺もでさァ。」
触れるだけのキスをどちらともなく欲した。
長い夜はまだまだこれから。
■06.08.21
↓拍手です。